第6章

オースティンの病状は良くならず、日が暮れると、むしろさらに悪化した。全身が熱く、言葉も不明瞭になった。私は半ば抱えるようにして、彼を私の腕の中に寝かせ、少し冷めた食べ物を口元に運んだ。

「閣下、何か食べてください」

「食べたくない、吐き気がする」と彼は言った。

「では、水を飲んでください」

「飲まない、どけ」

「飲んでください、少しだけでも」私はスプーンで無理やり飲ませようとし、それから食べ物を口元に持っていった。「食べてください、食べて吐く方が何も食べないよりましです」

「どけ、聞こえないのか！」彼は怒鳴った。

私は仕方なく食べ物と水を下に置き、彼を仰向けに寝かせた。しばらくして、彼は私の目を見つめ、ゆっくりと言った。「私はここで死ぬだろう」

「考えすぎです、大丈夫です、私を信じてください」と急いで慰めた。

「もし私が死んだら、この家の人たちが私の全財産を相続する。実に滑稽だ、私は彼らと相続権について話し合うために来たのに、逆になってしまった。彼らはきっと喜ぶだろう」と皮肉な口調で言った。

私は一瞬たじろぎ、答えなかった。

「私の従者は？彼らは病気なのか、それとも来たくないのか？」オースティンが尋ねた。

「一人は病気です」と答えた。

「そうか？ふん！」彼は世をはかなむ抗議者のように、顔をわずかに歪めた。それから、私をじっと見つめて、「彼らさえここに来たくないというのに、なぜお前は来た？死ぬのが怖くないのか？」

「私たちは死にません」と言った。

「どこからそんな自信があるんだ、実に滑稽だ、お前のような卑しい下僕が……」彼は言葉を終えず、咳き込み始め、長く咳き込み、顔が真っ赤になった。

「ゆっくり休んでください、すぐに良くなりますよ」と優しく言った。

彼はシーツを握りしめ、全身が震え、顔色と唇は紙のように真っ白だった。「力がない、寒い、主が私を召す、私は父に会いに行く」

私は彼の額に触れ、まだ熱があるのを感じた。彼が寒がるのも無理はない。彼は私を見つめ、目には力がなく、表情は絶望的だった。私は少し笑いたくなった。この臆病な男が、あの冷静沈着な「ロイド男爵」だとは想像もつかなかった。死に直面すれば、どんなに強い男でも恐怖を感じるものらしい。

私はため息をつき、ベッドの端に座り、靴を脱いで彼の布団にもぐり込んだ。

「何をするんだ？」彼は眉をひそめ、侮辱されたように感じたようだ。

私は首を振り、話すなと合図し、両腕で彼の体を抱きしめた。「まだ寒いですか？寝てください、私がついています」

私の体温を感じたのか、彼は少し躊躇した後、従順に私の腕の中に横たわった。そうしてすぐに、彼は眠りに落ちた。

彼の寝顔を見つめながら、私は深く息を吐いた。

私は彼にした全てのことを後悔していた。もし償いができるなら、必ず努力するつもりだ。前回、執事に強制的に命じられて彼の世話をした時とは違い、今回は自らの意思で来たのだ。前回は、天然痘に感染する恐怖でびくびくしており、しっかりと世話をせず、ただ早く逃げ出したいと思っていた。しかし今回は、初めての接触だったにも関わらず、お互いに多くの言葉を交わした。

窓の外では再び雪が降り始め、うううと吹き荒れる風が窓枠を揺らし、ばんばんと音を立てた。この静かな夜、私は一睡もできなかった。前世の全てが潮のように私の脳裏を駆け巡り、私はただ腕の中の男を強く抱きしめ、これらを忘れようとした。

私は毎日苦労して働き、いつか自然に目が覚める日を待ち望んでいた。今日、私は本当に自然に目が覚めた。朝日の光がまぶたに直接差し込み、耳たぶにかすかな息遣いを感じた。目を開けると、深褐色の瞳が見えた。私たちは昨夜の姿勢のまま、私の両腕は依然として彼をしっかりと抱きしめていた。

二人の男が抱き合って眠るとは、実に奇妙なことだ。男爵の顔にはすぐに当惑の色が浮かんだ。「私のベッドから離れてもらえるか？」と彼は言った。

私はさらに当惑し、急いでベッドから起き上がり、身なりを整えた。「だいぶ良くなったし、少し空腹も感じる。これは天然痘ではないはずだ、天然痘なら私の状態よりもずっと深刻だろう。子爵様に知らせて、医者を呼んでくれるように伝えてくれ」と彼は冷たく私に言った。

「はい、お嬢様、すぐに参ります」私はお辞儀をし、ドアに向かって歩き出した。

「待て」と彼は私を呼び止めた。

私は振り返って尋ねた。「他に何かご用でしょうか？」

「お前のカツラが曲がっている」と彼は指摘した。

私は慌てて触ると、カツラが耳にかかっているのに気づき、恥ずかしさでいっぱいになった。「少々お待ちください」と言い、私は速足で執事室に向かった。

執事は私の姿を見ると、恐怖に満ちた表情をした。「どうして出てきた？何かあったのか？男爵様のご気分が悪いのか？」

「男爵様はだいぶ良くなられました。天然痘ではないようです。医者を呼んでほしいとおっしゃっています」と私は答えた。

「本当に天然痘ではないのか？どうして良くなったと分かる？」と執事は疑った。

「今朝、熱が下がり、どうやら発疹のようです」と私は説明した。

「発疹だと？ばか言え！男爵様は26歳だ。子供のように発疹が出るはずがない」と執事は反論した。

「でも確かに熱は下がりました」と私は主張した。

執事はしばらく躊躇した。「わかった、子爵様に知らせ、医者を呼ぼう。お前は勇敢だ、褒められるべきだ。子爵様にお前の働きを伝えよう」

医者は診断後、「確かに天然痘ではありません。伝染性のある発疹ですが、危険性は高くありません。高熱で発疹が充血し、天然痘の疱疹のように見えたのでしょう。風を避け、数日もすれば治るでしょう」と言った。

最初に男爵の世話を拒んだ側近の使用人は恥じて辞職した。執事は新しい使用人が到着するまで、私に暫定的に男爵の世話をさせた。

ベイカー荘の主たちが次々に見舞いに来た。特に三女のローレンは毎日訪れ、感染のリスクを全く気にしない様子だった。

男爵は以前の無口な様子に戻り、落ち着きと威厳を見せた。彼は私に指示する時にはっきりと、まるで数日前のあの弱々しい男はもう存在しないかのようだった。私たちの間には余計な会話はなく、ただ本を取る、夕食の手配、照明の調整、暖炉の火を強くするといった簡単なやり取りだけだった。

リズベスは興奮して私に言った。「おめでとう、トーカー様！あなたは男爵様の側近になったのよ」

ローズは冷たく割り込んだ。「やめておけ、ただの臨時だ。男爵の新しい使用人がすぐに来るって聞いてないのか？」

リズベスが疑いながら言った。「あなた、トーカーを妬んでるんでしょ。」

ローズは軽く笑って：「はっ、彼を妬む？冗談じゃない。ただ、喜びで頭がおかしくならないように忠告してるだけだ。」

「でもトーカーは上級従僕に昇格するんでしょ？」リズベスは期待に満ちた目で私を見た。

私は頷いて答えた。「確かではありませんが、ポッド執事が褒めてくださったので、多分そうなると思います。」

「それは本当に良かった。」リズベスは嬉しそうに言った。

私は前回、天然痘と間違われた男爵の世話をしたことで上級従僕に昇格したことを思い出した。今回も大きくは変わらないだろう。

ちょうどその時、壁のベルが鳴った。

「あら、男爵様があなたを呼んでるわ。」リズベスが言った、「一日中部屋で男爵様と一緒だったのに、ちょっと出ただけでまた呼ばれるなんて。」

私は説明した：「男爵様は寒がりで、時々薪を足す必要があるんです。」そう言って、私はトレイを持って客室に向かった。

トレイにはライム酒の入ったガラス瓶が載っていた。私はドアを2回軽く叩き、部屋に入ってトレイをテーブルに置き、小さなグラスに酒を注いで男爵に差し出した。「お酒ですが、医師は飲まない方が良いとおっしゃっています。」

男爵は長い間私を見つめ、グラスには手を付けずに言った：「下がりすぎだ。私の本はもう読み終えた。新しい本を持って来い。今日の新聞はなぜ届いていない？」

「申し訳ありません、大人。雪のため、今日の新聞は遅れるかもしれません。どのような本をお読みになりますか？今すぐ探して参ります。」私は答えた。

「この古い家に何の本があるというのだ？」男爵はしわがれ声で言った、「旅行記を二冊持って来い。」

私は急いで階下に降り、ホールの書斎に行き、適当に2冊の旅行記を選んだ。本を持って戻ると、男爵は2ページめくって眉をひそめた。彼は本を脇に放り投げ、明らかに私が選んだ本に満足していないようだった。