第13章

ベリーはリボンをハンドバッグに押し込み、軽やかな蝶のように笑いながらバルコニーを去った。私はその場に立ち、彼女の遠ざかる後ろ姿を見送った。このいつも波風を立てるのが好きな女は、いったいどんな行動に出るのだろうか？

これらの貴婦人たちは表面は姉妹のように親しくしているが、実は互いに憎み合い、陥れ合っている。彼女たちは「あなたの不幸が私の喜び」という法則を信奉している。子爵夫人はベリーが淫らな女で、下賤な男とつるんでいるという噂を撒き散らしている。ベリーが知らないわけがない。おそらく彼女はもう歯軋りするほど恨んでいて、子爵夫人を引き裂き、地獄に落としたいほどだろう。

彼女はどう反撃するのか？ 直接ギャレット子爵に告げ口するか、それとも陰で噂を広め、もっと多くの人に知らせるか？ だが、いずれにせよ、これらは私とは関係ない。

バルコニーでは寒風が吹き荒れ、冷たい風が猛威を振るっていたが、私は心の中が火のように熱くなるのを感じた。長い待ち時間と潜伏はついに終わり、復讐の幕が上がった。

深く息を吸い、私はネクタイを整え、落ち着いて階段を下り、ホールに戻った。ローズは私が戻ってくるのを見て、興奮して近づいてきた。「どうだった？」

私は軽くうなずいた。「まあまあ順調だった」

「よかった、チャンスができたな……」ローズがべらべらと話している間、私の視線は常に人混みの中からベリーの姿を探していた。

私は彼女が一群の貴婦人たちの真ん中に立っているのを見た、彼女たちはひそひそ話をしていて、皆興奮した表情をしていた。「彼女はそんなに馬鹿じゃないだろう、直接人に話すなんて？」私は低い声で呟いた。

「何て言った？」ローズは怪訝そうに聞いた。

「何でもない」私は急いで答えた。その時、年配の紳士がガラスのコップを掲げ、銀のスプーンで軽く叩き、澄んだ音が会場全体の注意を引いた。

老紳士は微笑みながら言った。「さきほどご婦人方からゲームをしようという提案がありました」

「どんなゲームです？」若い紳士たちは興味津々で聞いた。

「品当てゲームです。ご夫人方とお嬢様方がそれぞれ身に着けている品物を一つ出していただき、紳士の方々にその持ち主を当てていただきます」老紳士は説明した。

「まあ、それはあまりにも無作法ですわ、もしお嬢様方やご夫人方の名誉を傷つけるようなことになったら、困りますわ」一部の慎み深い貴婦人たちが反対した。

「これはただのゲームです。もし一つの品物が多くの紳士に当てられたら、それはその持ち主が最も美しく、最も注目されている証拠、これは大変な名誉ではありませんか？」老紳士はそう返答した。

「いいぞ、やってみよう。」若い独身の紳士たちはやる気満々で、それぞれの想い人の方に目をやり、多くの未婚の娘たちは顔を赤らめた。

こうして、このゲームは女性たちの半ば渋りながらも始まった。老紳士は大きな紙箱を運ばせ、中には先ほど女性たちから集めた品々が詰まっており、ほとんどが扇子、ハンカチ、香袋などだった。

老紳士はピンク色のハンカチを取り出し、紹介した：「これはピンクのシルクのハンカチで、ほのかにジャスミンの香りがする。」

言葉が終わると、紳士たちはすぐに議論を始めた。「これはルイ夫人のだ。」「いや、グリフィン嬢のだ。」議論の末、最後に一人の若者が正解した。彼はハンカチを受け取り、一人の若いお嬢様の前に歩み寄り、優雅にハンカチを返した。少女は恥ずかしそうに受け取り、周囲には善意の笑い声が響いた。

品々は次々と舞台に上がり、あるものは当てられ、拍手と微笑みを勝ち取り；あるものは長い間誰も答えられず、持ち主が自分で取りに来て怒りを露わにした。

その時、老紳士は一つの品物を取り出した――長いリボンだった。彼は眉をひそめ、これが何で、どう紹介すべきか考えているようで、場内ですでに顔色が変わる人がいることに全く気づいていなかった。

「うーん、これは模様のついた長いリボンだ。私が無知なのか、こんなに長い帯はどこに結ぶものかわからない。まあ、紳士たち、これはどの女性のものか当ててみてくれ。」老紳士はリボンを振りながら言った。

「あら、それはどうも……」一人の若いお嬢様が何か言おうとしたが、突然顔を赤らめてうつむいた。

一人の婦人は気にも留めず扇子で口を隠し、大声で言った。「まあ、誰が下着の帯をここに置いたの？」

多くの男性はすでにそれが下着の帯だと気づいていたが、やる気はあっても、不用意に口を開いて人を困らせることを恐れた。賓客の中にはベイカー荘によく出入りする人も多く、自然とこの帯の模様が斬新でかつ見覚えがあることに気づいた。あるお嬢様がこんな模様のスカートを着て歩き回っていたのだ。

多くの人の視線は場内のフレイヤに向き、その後ひそひそ話が始まった。フレイヤは青白い顔で、今にも気を失いそうだった。「ロイド子爵一家」も慌てふためき、雰囲気は一気に緊張した。

ギャレットは当然この厄介な状況に気づき、厳しく尋ねた：「どうした？あれは誰のものだ？」

「あ、あれは私のものじゃない……」フレイヤは後ろめたそうに言った。その時、誰かが叫んだ：「フレイヤ・ロイド嬢がこんな模様の服を着ているのを見たことがある。」

「何を言っている！」ロイド子爵はすぐに怒り、その発言した客に向かって拳を振り上げた。場面はすぐに大混乱となり、男性の賓客は仲裁に忙しく、女性の賓客は叫びながら騒ぎを見物し、噂もたちまち人々の間で広まったが、誰が最初に言ったのかは誰も覚えていなかった。

「フレイヤは家の男僕のバイユーと不倫関係にあるらしい、府中の使用人たちまで知っているそうだ。」

ギャレットは顔面蒼白だった。彼はすでに多くの人にフレイヤと結婚するつもりだと話していたが、この時は一言も発せず、背を向けて去った。フレイヤは彼を追ってホールから駆け出した。

その後起こったことはまさにスキャンダルとなり、ヨークシャーで何年も語り継がれた。ある人はギャレット子爵が夜中にベイカー荘を去り、結婚の話も二度と口にせず、まるで何もなかったかのように振る舞ったと言う。

クリスマスディナーの雰囲気は一気に氷点下まで下がり、賓客たちはこっそりと去り始め、別れの言葉さえ言いたがらなかった。なぜなら、この時の主人は大いに怒り狂っていたからだ。

「これはどういうことだ！お嬢様の衣類はあなたが管理しているはずだろう？なぜ帯があそこにあったんだ！」子爵は怒りに震えながらフレイヤの付き人を掴み、雷のような声で詰問した。

メイドは涙で顔を濡らし、震えながら言った。「知りません、本当に知りません！あの帯はずっと前に見つからなくなったんです。あの夜、お嬢様の着替えを手伝った時にも見つからず、夫人にも報告しました。夫人は『見つからないなら仕方ない、新しいのを買いなさい』とおっしゃいました。」

子爵は怒りに任せて妻の方へ向き直った。子爵夫人は当惑した様子で、言葉に詰まりながら言った。「私も知りません、私はてっきり……」

「てっきり何だ！着替えの時に見つからなかったものが、どうしてあそこにあったんだ？お前の娘に聞いてみろ、外で服を脱いだのか！それに、あの噂はどういうことだ！」子爵は怒りに震えていた。「男僕を連れて嫁ぐと言った時からおかしいと思っていた！あのバイユーという男僕を、すぐに呼びつけろ！裁判にかけてやる！それと、他の使用人たちはなぜこんな噂を早く報告しなかったんだ！」

「騒ぎにしてはいけません、もし大ごとになれば、我が家の評判は地に落ちます。お父様、どうか落ち着いてください。」ローレンは子爵の腕をしっかりと掴み、怒りを鎮めようとした。

子爵は深く息を吸い、長い沈黙の後、低い声で言った。「このメイドを裁判にかけ、お嬢様の物を盗んだ罪で告訴せよ。」

「私じゃありません、私じゃありません！」メイドは必死にもがき、信じられないという表情を浮かべた。こんな高価な品を盗めば、絞首刑に処せられるのだ。

「あなたが盗んでいないなら、姉の物がどうしてあそこにあったの！」ローレンは声を張り上げ、怒りに満ちた口調で詰め寄った。

「お嬢様とバイユーが……」メイドは弁解しようとした。

「黙れ！」子爵は即座に彼女の言葉を遮り、厳しい声で言い放った。「この卑しい女は悪魔に惑わされ、お嬢様の帯を盗み、お嬢様の名誉を傷つけた。極悪非道だ！裁判官に絞首刑を宣告させろ！」

その言葉が終わらないうちに、哀れなメイドは無情にも外へ引きずり出された。

一見解決したように見えたが、この事件が残した傷跡は消えなかった。子爵家の未婚のお嬢様と男僕のスキャンダルは、真偽にかかわらずヨークシャー中に広まり、さらに婚約破棄までされたことで、噂はますます激しさを増した。

パーティーが終わると、バイユーという名の男僕は屋敷から追い出された。その後まもなく、彼はヨークシャーの街路で極めて悲惨な最期を遂げた。この騒動は、関係者全員に重い教訓を残したようだった。

「あなたが帯をあそこに入れたの？」子爵夫人はついに、ローレンと二人きりになった時、長い間胸にしまっていた疑問を口にした。

「お母様、あなたまで他の人と同じように愚かだとは思わなかったわ。」ローレンは眉をひそめて答えた。

「でも、あなたはあの日フレイヤのドレスを引き裂いた……」子爵夫人の疑念が再び湧き上がった。

「たとえ私がフレイヤがギャレット子爵を奪ったことに不満でも、大局を見失うほど愚かではありません。それに、フレイヤと私は姉妹です。彼女の評判が落ちれば、私の評判が良くなるわけでもないでしょう？今では外出するたびに笑いものにされているんです！」ローレンは唇を噛み、憤慨しながら言った。「フレイヤのあの馬鹿女、自分が不謹慎なのに、私まで巻き込んで……」

ドアの前で、フレイヤの付き人メイドは信じられないという表情で目を見開いた。彼女はローレンをフレイヤの部屋に呼びに行くように命じられていたが、思いがけずこんな会話を耳にしてしまったのだ。

メイドは慌てて私を見た。私は仕方ないという表情で首を振り、小声で言った。「まさか……ああ……ローレンがそんなことをするなんて……」

メイドは唇を噛みしめた。以前一緒にフレイヤに仕えていたメイドは、この事件のせいで裁判にかけられ、絞首刑になるかもしれない。死ななくても、アメリカや南方大陸に流刑になる可能性がある。彼女は待ち続けず、黙ってその場を去った……