第7章

私は彼が退屈していると思い、提案した。「階下からもっと本を持って参りましょう。お好きなものをお選びいただけます。」

「いいや、今は本を読みたくない。」彼は断った。

「かしこまりました。」私は応じた。彼のそばに立っていると、彼が私をじっと見ているのが感じられ、私は緊張せざるを得なかった。

「お前は……何が欲しい？」彼は突然奇妙な質問をした。

「え？」私は一瞬戸惑った。

男爵は枕にもたれ、目を閉じながら言った：「つまり、この間私の世話をしてくれたのだから、褒美を与えるべきだ。金が欲しいか？それとも他の何か、道理にかなったものならできるだけ叶えてやる。」

彼の態度は高慢で、まるで私を見下すようで、軽蔑の色が少し混じっていた。

私は前世でこんな恥ずかしい目に遭ったかどうか覚えていない。

私はできるだけ謙虚に言った：「お世話するのは当然です。あなたはベイカー荘の尊いお客様です。褒美については、子爵様が既に上級従僕に昇格させるとおっしゃってくださいました。」

「……そうか。他に何か要求があれば、私に言うが良い。」彼は手元の二冊の本を見て、続けた。「字が読めるのなら、本を読んで聞かせてくれ。自分で読むのは面倒だ。」

「かしこまりました。」私は男爵から渡された本を受け取った。それは空飛ぶ島についての本で、「空飛ぶ島の冒険」という題名だった。

私はゆっくりとした調子で、一言一句をはっきりと読み上げた。「密林では時々雨が降り、私たち一行はずぶぬれになった。私たちは密林の奥深くで道に迷い、これは危険だった。なぜならここには毒蛇や猛獣がたくさんいたからだ。夜までにキャンプ地を見つけられなければ、私たちの命は危険にさらされるだろう。」

「黒い肌の人間たちは獣のように、粗末な槍や獣の骨を持って、私たちの周囲で跳ね回った」。この節は、数人の探検家が小さな部族を発見し、彼らと交流した経験を記したものである。最初はすべてが正常に見えたが、話が進むにつれて、「……その裸に近い黒い肌の少女たちは私を密林の奥へと引きずり込み、彼女たちは自らの体を覆う唯一の布を引き裂いた……」

「なぜ読まないのだ？」男爵は突然私に尋ねた。

私はきまり悪そうに彼を見上げると、彼は興味深げに私を見ていた。「これ……私……」と、私は長い間躊躇した。本の内容はあまりにも大胆で、一言も声に出して読めそうになかった。

「あなたは今年いくつだ？」彼は突然尋ねた。

「18歳です」と私は答えた。

「まだ18歳？つまりあなたはまだ子供だ。私の世話をしに来た日はあれほど落ち着いていたので、私より大人だと思っていたよ」男爵は私を一瞥し、ゆっくりと言った。「続けて読みなさい、あなたが読むのを聞きたい」

私はその長々とした官能的な描写のページをめくり、慎重に男爵を見てから読み始めた。男爵はただ冷笑するだけで、私のことを突っ込まなかった。

暖かな午後、彼は目を閉じて静かに枕にもたれていた。私はベッドの脇に座り、本を読んでいた。時折、窓を影が横切った。冬の餌を探す雀だった。

彼の呼吸が穏やかなので、眠ったと思い、私は本を置いた。するとすぐに彼は目を開け、「どうして読まないんだ？」と私を見ながら言った。

「お眠りかと」と私は答えた。

「あなたの声はとても良い」と彼は言った。

「……お褒めいただきありがとうございます」と私は応じた。

「続けて……」

冬の午後はページをめくる音と共に静かに過ぎていった。夕暮れ時、私は男爵の使った食事の「トレイ」を運んで部屋を出ると、階段の角で「ローレン」に出会った。彼女は薄緑の絹の「ロングドレス」を着て、金色の「カツラ」の間にきらめく「ルビー」を散りばめ、夕闇の中で輝いていた。

私はお辞儀をすると、彼女は羽根扇を軽く振りながら微笑んで言った。「あなたは語り手ですね？男爵様のご機嫌はいかが？」

「男爵様は回復中です」と私は答えた。

「一人で部屋にいては退屈でしょうに、何をなさっています？」

「男爵様は何冊か本をお読みになりました」

「まあ？どんな本です？」と彼女は追及した。私はややためらい、彼女を見上げた。ローレンは他人のプライバシーを詮索するのが適切でないと気づいたようで、にっこり笑って言った。「構いませんよ、遠慮なくおっしゃって。私は男爵様とよく本の話をしますから」

「主に旅行記が数冊……」と私はありのままに伝えた。

ローレンは優雅に去り、私はその場に立ち尽くし、彼女の後姿が遠ざかるのを見送った。夕日の光がガラス窓を通して廊下のカーペットに差し込み、階下からはラケリア家政婦が灯りをつけるように指示する声が聞こえてきた。

すべては普段通りに見えたが、ただ私の心境だけがすでに変わっていた。前世、ローレンが自ら話しかけてきた時、私はどれほど狂喜したことか。あのように高貴で優雅な女性に、私は胸を躍らせた。しかし、まさにこの妄想が、最終的に私の悲劇を招いた。思い上がった者は必ず失望する。彼女のような貴族が、私のような卑しい者に心を寄せるはずがない。

突然、オースティンの姿が脳裏に浮かび、胸が締め付けられるような苦しさを感じた。もしかしたら貴族も私のような小物を愛するかもしれない。だが当時の私は美夢に酔いしれ、周りのすべてを見て見ぬふりをしていた。男に好かれることがどれほど不快で汚らわしいことか、まるで尊厳が踏みにじられたように感じた。オースティンへの憎悪は心に根を下ろし、私が深く愛するローレンと結婚するかもしれないという可能性でますます深まった。

乱れた思いが心に渦巻き、私はまたオースティンに近づいたことを後悔し始めた。また彼を利用しようとしているのか？この考えに私は居ても立ってもいられなくなった。彼に近づきたいという気持ちは、私を傷つけた人々への復讐心から来ているのではないか？オースティンは間違いなく私の復讐の道具となるだろう。だからこそ私は彼が病気の時に看病して信頼を得ようとした。しかし、そんな卑劣な私は、前世と何が違うのか？また彼を騙し、傷つけるつもりなのか？

夕日はすでに沈み、私は薄暗い廊下に一人立っていた。壁の絵画は影の中で歪み、不気味な形に変容していた。

「まあ！」一声の驚きの声が聞こえた。「トーカーですか？ここで何をしているんですか？こんなに暗くて、ろうそくもついていない。」

「リズベス？ごめんなさい、驚かせてしまいました。」私は急いで謝った。

「最近ますます変になっていますよ、このままではポッド執事が怒ってしまいますよ。」彼女はそう言いながら、廊下のろうそくに火を灯した。

「気をつけます、ありがとう。」私は微笑みで返した。

リズベスはぼんやりと私を見つめ、頬を赤らめて小声で言った。「新しい娘たちがあなたに夢中になるのも無理はないわ、あなたって男は……」彼女は少し間を置いて尋ねた。「男爵様の新しい従僕が明日到着しますが、あなたはまだ彼にお仕えするのですか？」

「新しい従僕が来るなら、当然私の出番はありません。」私は首を振った。「私はすでに上級従僕に昇格していて、ポッド執事がしばらく指導した後、食事の担当を任せられる予定です。」

しかしその夜、ロイド子爵が突然私を書斎に呼び出した。彼の書斎には本棚が並んでいるが、それらの本のほとんどは飾り物だ。この子爵は読書が好きではなく、美食、美酒、美人に夢中だった。

私は前世のことを覚えている、彼が私の肩を叩いて言った。「オースティンはあなたが好きだ、あなたが彼を受け入れるふりをすれば、彼はきっと大喜びするだろう。彼があなたを信頼したら、あなたは彼の書斎に入ることができる……私たちロイド家はあなたの恩を忘れず、必ずあなたの犠牲に報いる。それにローレン、あの可哀想な娘、彼女はあなたが好きなのに、あの猫背と結婚させられる……」

しかし彼らが望みを叶えた後、醜い本性が冷たく私に向けられた。法廷で、このロイド子爵は私を指さし、厳しい声で言った。「裁判長、彼は私の財物を盗んだのです、絞首刑に処すべきです！」

私は絞首刑を待つ牢屋に入れられ、ちょうどヨークシャーの戦乱に巻き込まれた。私は運よく脱出し、その後は名前を変え、逃げ回る生活を送り、あの日チフスで死ぬまで……

今、私は態度の穏やかな子爵を見つめ、謙虚な笑みを浮かべた。「ご主人様、何かご用でしょうか？」

「ああ、あなたがその勇敢な若者か。甥のオースティンの世話をしたそうだね、あなたの行動が彼の信頼を得たようだ。今日彼は私に、あなたに引き続き彼に仕えてほしい、彼の側近としてと伝えてきた。」

私は呆然とした。男爵様が私に引き続き仕えるように指定したのだ。彼が病気の時の献身的な世話が、この世と前世を違うものにしたのだろうか？

私は躊躇し始め、心の中に「彼を利用する」という考えが再び浮かんだ。神が私を再生させたのは、再び卑劣な道を歩ませるためだろうか？もし前世で私を殺したのが子爵一家なら、この世でオースティンを殺すのは私だ。私は彼から離れるべきだ、遠く離れるべきだ。

「どうして黙っているんだ、ん？オースティンの世話は細心の注意を払いなさい、ポッドにもっと教えてもらいなさい。」子爵は言った。「男爵の周りのことを定期的に私に報告する、わかったか？」

「でも、私は……」私は反論しようとした。

「でも何だ！」子爵は我慢強く、優しい声で言った。「いい子だ、私はあなたが良い子だと知っている。だが私はオースティンの伯父だ、彼のことが心配なんだ、わかったか？」

「……はい、わかりました、ご主人様。」私はほとんど忘れていた、従僕として、主人が命じたことには、追い出されたくなければ、拒否する余地などないのだと。